Research Vision

本研究室では無線通信システムを軸に分野横断的な研究に取り組んでいます。現在推進している研究は大きく分けるとVision-WirelessCommunication-oriented Machine Learningになります。どちらも通信システムの観点から、Computer visionやMachine Learningとの融合領域を探求するものです。

Vision-Wireless

無線通信とコンピュータビジョンの融合領域に関する研究を推進しています。5Gや6Gなどの次世代移動体通信ではミリ波やテラヘルツ波など、従来はレーダに用いられていたような非常に高い周波数が通信に用いられます。しかし、これらの高い周波数の信号は車両や歩行者によって遮られるだけで大きく減衰します。本研究では、身の回りに増えつつあるカメラやLiDARなどの環境センシング技術を用いてこれら高周波帯通信の状態を予測したり通信に役立てるVision 4 Wireless (V4W)技術や、その逆の問題、すなわち、無線通信の信号から環境の状態を推定するWireless for Vision (W4V)技術を研究しています。

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Vision to Wireless Communications (V2W)

カメラ画像などコンピュータビジョン技術を用いて無線通信を予測したり制御したりする新技術を創出します。
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Wireless for Vision Sensing

Wi-FiやWigigの信号から、部屋にいる人の人数や行動を推定したり、映像を復元したりする次世代のセンシング技術を実現します。

Communication-oriented Machine Learning

無線通信と機械学習の融合領域に関する研究を推進しています。特に通信ネットワーク上のスマートフォンやラップトップ、サーバやIoTデバイスが、互いに連携しながら機械学習のモデルの訓練や推論処理を分散協調に行う技術に関して、通信ネットワークとの親和性の高い手法を研究開発しています。具体的にはFederated Learning (連合機械学習)やSplit Computing(分散推論)、Semantic Communicationsの新たなアルゴリズムやメカニズムを研究します。

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Communication-efficient Federated Learning

スマートフォンやセンサなど無線ネットワーク上の端末のもつデータや計算能力を活用して機械学習を分散的に行い、高度なAIを実現します。
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Communication-oriented Split Computing

通信帯域の制限や通信路におけるパケットの欠損など、通信ネットワーク的な制約がある中でも効率的に動作する分散機械学習推論手法を研究します。

Specific Research Projects and Highlighted Results

ASPIRE (2023年度〜2026年度)

電通大の須藤先生(代表)と佐藤先生とチームを組み、無線通信・センシング・機械学習の融合領域研究に関して国際的研究を推進。

ALCA-NEXT (2024年度〜2027年度)

京都大学の粟野先生(代表)と筑波大学 境野先生とチームを組み、GreenなAIロボット実現に向けた研究を推進します。西尾研究室では特に分散したロボットにおけるAI学習の低消費電力化などに取り組んでいます。

JST さきがけIoT 「機械学習するIoT通信ネットワーク基盤」 (2020年度〜2023年度)

本研究は、IoT-AIトラヒックの爆発的増加とデータプライバシの課題を解決するため、IoTデータの地産地消を実現する通信とAIデータ処理が一体化したIoT基盤構築を目指す。従来型クラウドAIを用いたIoTデータ処理ではなく、IoTデータを収集するローカルNW内で分散的にAI処理することで、コアNWのトラヒック削減とリアルタイム性向上および機密情報流出の危険性を大きく低減可能なIoT基盤を創出する。代表的成果は以下です。

Distillation-Based Semi-Supervised Federated Learning (DS-FL)

Federated Learningの課題であるモデル共有時に発生する大量の通信トラヒックを削減するため、モデル自体ではなくモデルの出力(logit)を用いた学習フレームワークを提案した。従来のモデル共有に基づくFLと比べ、一定の精度を達成するまでの通信トラヒックを1/50~1/100に低減できることを示した。

Communication-oriented Model Tuning for Split computing (COMtune)

ニューラルネットワークを分割し端末とサーバで分散的に行うSplit computingにおいて、ニューラルネットワークの構造を工夫することで通信トラヒックの削減やパケット損失耐性を向上し、Split computingの通信効率を向上する技術を提案した。70%のパケットが損失する状況においても推論性能の低下を維持できることを示した。